「じゃあ、私行くから」


「うん…じゃあ」



秀は、黒い手袋をはめた左手を上げて、少しだけ唇の端を上げて笑った。



「俺、沙絢のこと、すごく好き…だった」



「……うん、私も。

秀。もう、寂しい思いさせちゃダメだよ」



秀はその言葉を聞くと、何も言わずに頭を下げた。


私は前を向き、秀を置いて、紫音の元へ進んだ。