「ベンチで…っ寝ちゃって……」
『えー?ベンチで、何ー?』
「……っ」
聞こえてるくせに!
美鈴ちゃんのバカ!
バカ バカ バカ!!
……そう思ってても、口に出して言えないけど…。
美鈴ちゃん…怖いし……。
『いーぶ?』
「みれ…っちゃ…」
許してほしい。
ごめんなさい。
謝るから。
だから怒らないで……
――『俺のいぶ、イジメないで……?』
『!!』
「ぃ…ちく…っ」
自己嫌悪に陥って泣きそうになっていると、スクールバックを持った壱くんが、教室の出口で背もたれながら立っていた。
『……いぶ、迎えに来た。…おいで……?』
「……っ」
何故か壱くんに引き寄せられる。
おいでって言われただけなのに。
壱くんの元に、行ってしまう自分がいる――…。
「美鈴ちゃ……ば、いばい…」
無理矢理作った笑顔はぐちゃぐちゃだったに違いない。
でも、
『…帰ろ…?』
「…ぅん。」
繋いだ壱くんの手の温もりに、私の心は少しだけ、軽くなったような気がした。