慌ててレジに走っていく王子。

「そんなカネなどいらん」

「それでは、お嬢さまの今日までガンバリはどうなるんです? 一生懸命ガンバってたお嬢さまに対して、それではあまりにも失礼ではありませんか?」

「王子っ…」

「バイトなどとは言っても、所詮は“ままごと遊び”に毛がはえた程度のものなのだろう? カネなど受け取るわけにはいかん」

「いえ、王様のショコラ店長としての誇りにかけましても、従業員の給与はキチンとお支払いさせていただきますっ」

王子はレジから数枚のお札を無造作に取り出すと、あたしに駆け寄って…、

「これを今日までのバイト代だと思って受け取ってくれ」

…そう言ってやさしく微笑んで、あたしの手に“ぎゅっ”とお札を握らせてくれた。


「王子っ!」


「この一ヶ月はホントすげぇ楽しかったよ」


「あたしもだよ、王子。ここで過ごした時間は一生忘れないと思うし、絶対忘れられないと思う」