「じゃあ、なんで私に黙ってバイトなんかしたんだ。え?言ってみろ」



あたしは一瞬、厨房にいる王子のほうを見て、またパパのほうに視線を戻した。

「………」

“好きな人と一緒にいたかったから”

…なんて言っても、パパには絶対に分かってもらえるとは思わない。



「パパに黙ってたのは悪いと思ってる。でも、正直に言ったところで頭ごなしに“ヤメロ”って言われるのは分かってたし……」

「分かっていながら、なぜ私に背くようなことをした? 今までのお前は私の言うことに逆らうような子じゃなかったはずだぞ」

「今までは別にやりたいこともなかったし、パパの言うことをおとなしく聞いて、ずっと“いい子ちゃん”にしてたけど、でもホントはあたしにだって自分の意思があるんだ」

「お前の意思だと?」

「あたしはパパの思い通りになる“お人形さん”なんかじゃない。“人間”よ。自分の意思で行動ができる人間なんだよ」

「なら聞くが、お前は自分の意思で、そんな恥ずかしげもない格好をして、よそ様の前に出ているのか?」