「携帯は持ってる?」

「ないです」

うちの親は、周りの評価を気にするタイプだから高校まで携帯を与えてくれない。
その代わりに、親の携帯を自由に使わせてくれるんだけど。

そう、ぼんやりと考えていると先輩は黄色の機械を出した。

「そっか。 んじゃ、これあげる」

「……え。だ、だめですよ」

先輩が取り出したのは、よく通話の為だけに普通の携帯と一緒に使っている携帯だった。

「いいよ。これ兄貴にもらったやつだし。その代わり、俺専用にしてもらうけど」

「はあ……。取り敢えず頂きます」

「ん。 じゃ、時間もあるしまたメールする」


学ランを靡かせて、先輩は何事もなかったかのように走り去った。

「あ、時間…」

貰った携帯の時刻は、もうすでに本鈴がなる一分前。
遅刻か。