「別に、何の変哲もない脱衣所だし…」

脱衣所は特に驚くような事は無い…普通の脱衣所
さっさと服を脱ぎ、お風呂へのドアを開けた

「はぁ!?!」

普通じゃない光景に、ユウは驚くしかなかった
ユウが驚くのも仕方がない
何故なら、お風呂場には大きな水の塊が球のような状態で浮いているのだから

「も、もしかして…これに入るの??」

辺りを見回しても、この塊以外何も無い
浴槽も…シャワーも何も無い
ユウは恐る恐る近づき、水の球に触れた

チャポン

と、水が波打ち揺れる

「暖かい…やっぱコレに入るんだ…」

コレ以外何も無いので、コレに入る他無いのだが…
しかし、コレに入るのは、どうにも勇気がいる

「水の中でも息が出来るんだよね?」

誰に確認するわけでもない…自分に確認する
水の中で息が出来るなど、鵜呑みで信じられるわけは無いが、今は信じるしかない
右手をゆっくり入れていく
暖かいお湯がユウの右手を包む
腕まで入れると、右腕だけがお風呂に入っている感覚…

「頭まで入れなくて良いなら、入る事に躊躇いは無いのになぁ…」

ユウは、そう言いながら、大きく息を吸い思い切り頭を入れてみる

(あ、息止めてる…)

癖で息を止めている
息を吸ってみようと思うが、お湯が入ってきたら…と思うと、なかなか難しい

(息できるかな…出来なかったら嫌だなぁ…
よし、息出来なかったら、すぐ出よう!!!)

決意をすると、思い切って息を吐いて吸ってみる

「!!?…息出来る…」

出来なければ、ルイがユウに嘘をついた事になるのだが…
なので出来る事は当然なのだが、今までにない経験で思考回路はそこまで考えていない
ユウは足で床を蹴り、完全に中に入る

「わぁ~、すごーい♪」

上機嫌で泳ぐユウ
水中で息も出来るし、喋ることも出来る…初めての経験に、テンションは高かった

「あれ?頭洗ったりはどうするんだろう?」

ふと気づく
先ほど、シャワーが無いのは確認済み
シャンプーや石鹸も見当たらない…正真正銘このお風呂場には、このお湯の塊のみ

「ん~」

ルイに聞きに行こうかと、お湯の中で考えるユウ
ユウが考えていると、お湯の一部に泡が出てきた