『私はもう大丈夫』


 一哉の背中に、麗子はそう呼びかけた。



『私はもう大丈夫だから、別れよう』



 もしかしたら、一哉はそう受け取ったのかもしれない。
だとしたら、さっきの質問の意図も理解出来る。

 あの時、すぐに『好き』と言っていれば良かった。
 どうしよう。誤解を早く解かないと。




(誤解?)




 本当にそうだろうか? もし、一哉に別れようと言われたら。



(言われたら?)

 だって私は。



(私は?)

 私はきっと。




(私はきっと?)





~~~ 私はきっと、受け入れてしまう ~~~




「ごめん。あとちょっとだから、これ全部拭いちゃっていいかな」
 
 一哉が、いつものように笑った。