「おい、姉貴…?」



私を呼ぶ声もしたけれど、
そんなことを気にしていられるほど、私は今、余裕なんかない。



「あら、お帰り、竜也」

「…―――あぁ」



お母さんが呼びとめたみたい。

…正直、助かった。
ああいう時だけ、竜也は敏感に私の心を掴み取るんだもの。

今は、誰にも言いたくない。


皇にですら、言えていないのに。