「やっぱり、こわい…」

そう言うと、彼女は泣き出してしまった。

「大丈夫。ここにはぼくしかいないから。」

よほど一人でガマンしてきたのだろう。まるで幼い子供のような泣き方だった。

ベンチに並んで座ると、目の端に彼女のものらしきカバンが映った。
手を伸ばして引き寄せ、顔を出しているハンカチを引き抜き、彼女に差し出した。

「勝手にさわってごめん。」


しばらくすると、彼女はハンカチで涙を拭い、顔を上げた。

「ごめんなさい、見ず知らずの方の前で。」
「ぼくは平気だよ。
でも、そうだな、もう少しここで、ぼくのとなりにいてくれないかな。」

カフェオレを一本、彼女に渡した。