騎士「追い込んでごめんな。」


そう言って彼は立った。


座っているあたしから見る顔は高くてとても届くとは思えなかった。


さっきまで重なっていた肌も一気に冷めきった。


もう二度と触れ合うことのないくらい彼を初めて遠くに感じた。




あげは「…くっ……ふ…ッ」


ずっと傍に居てくれた…居るのが当たり前だった存在が居なくなるのがこんなに辛いなんて…。




騎士「ごめんな…。」


彼はそう言ってあたしの頭を撫でて部屋から出ていく。

いつもやってくれた、あたしの大好きな撫で方だった。


でも今泣いても隣に彼は居てくれない。




悪いのは騎士じゃないよ。

あたしなんだよ。


伝えたいのに嗚咽が止まらなかった。


広い部屋にあたしの嗚咽だけが漏れていた――。