〝もう離してよ!〟
って言おうとしたけどその言葉が発せられることは無いまま喉の奥へと溶けていく。
変わりに出たのは見事に被った
「「……ぁ」」
紫苑の目が大きく見開かれたのが分かった。
いつのまに部屋に入るほど仲良くなったんだろう…。
男の子って馴れ合うの早いもんね。
…とか、あたしが現実逃避してる間にも紫苑は何か言いたげに口を開いては閉じたりしている。
あげは「しっ紫苑っ!!これは「お幸せにね?」…っ!?」
そう言って彼は笑った。
泣きそうに瞳に涙を浮かべるのを必死に隠すように笑った顔はぎこちなく、胸を縛られたような息苦しさだけが残る。
―パタンッ
震える手で優しく閉められたドアの音はやけに大きく感じて、耳からずっと抜けなかったんだ。