でも、今のあたしにはそんな力なんてどこにもなかった


ニヤニヤしてあたしに近づいてくるお父さんを避けることしかできなかった


「来ないで・・・お願いだから来ないで!!」
「咲希が貸してくれたらどこか行くから」

「そんなの嘘よ!あたし小2の時のお父さんが好きだった!!今のお父さんなんて大嫌い!もうあたしに近づかないで!!あたしの幸せな家庭をぐちゃぐちゃにしないで!!」


そ―言ってお父さんから走って離れた


「はぁはぁはぁはぁ」


息が苦しくても、あたしは走るのをやめなかった


だって、だってだってお父さんが後ろから追いかけてきてるから


怖いよ、怖い誰か助けて


どれだけ走っただろうか


でも、後ろを振り返ればまだおいかけてくる父の姿


そんなにお金がほしいの?


どうしてそんなにあたしを追い詰めるの!?


―――ドンっ!


「きゃっ!」
「うわっ!」


思いっきり誰かとぶつかって、道路に尻もちをついた


ポンっと肩を叩かれた


ひやっとした