「ごめんね。ちゃんと説明するから。離して」
「いやだ、離さない。話したらまたどこかへ行ってしまいそうだから」
「どこも行かないから。だからお願い。離して?」


お兄ちゃんを説得させて、いったん家に入った


すでにもう、玲子さんは寝ていて


リビングには、たくさんの施設の資料があった


その中で、あたしが今住んでいる施設の資料があって驚いた


まだ電話はかけてないのかもしれない、でもいずれは絶対かけてくる


それならあたしは今自分の居場所を話す?


それとも話さない?


どっちがいいのかわからない。聞かれたら言おう


聞かれなかったら言わないでおこう


「咲希元気だったか?」
「・・・元気だったよ」
「あの日朝起きたら咲希が居なくてびっくりしたよ。今までどこに居たんだ?」


・・・やっぱり聞いてくるよね


「〇〇施設にいたの」


あたしの言葉に、お兄ちゃんは目の前にある資料を探った