「はい、着いた」
校門前で私は一度速水の方へ振り返る。
彼は髪の毛をくるくるいじりながら、校舎を見定めるように眺めていた。
「ふーん…まぁまぁ、だな」
つまり普通と言いたいのか。
まぁ、見た目も中身も多分普通だ。て言うか普通じゃない高校ってどんなだ。
校門前で立ち止まっていると、同じ様に登校して来た生徒の視線が集まる。主に速水に。そりゃイケメンだものね。
しかし私は変に注目されるのは好きじゃない。イケメン絡みはあらぬ誤解を呼ぶから特にだ。
静かに校舎の方へ向かう私の後を速水がついて来る。もう来なくていいのだけど。
昇降口まで来て、私は自分の下駄箱の前で靴を履き替えた。
「あんたさ…とりあえず受付口の方でスリッパ借りたら」
未だについて来る速水にそう告げてやるとキョロキョロし出す。
「…受付そこだから」
「い、今から向かおうと思っていた所だ」
そう言い張る割には動揺したように髪の毛をいじり出す。癖なのか、それ。
受付でスリッパを借りた速水は何だか無性に苛立ってしまう綺麗な笑みを浮かべて私の前にやって来た。
「案内ご苦労。まっ、貴様の案内がなくとも私1人でどうにかなったが…一応感謝する」
何故全てにおいて上から目線なんだろうか、解せん。
どうしてか、この人が口を開く度にイライラが順調に募って行く。
呆れる私に気づいてないのか、妙にいい笑顔で『じゃあな』とくるりと私に背を向けて廊下を歩き出した。
「ねぇ…職員室行かないわけ?」
「行くに決まっているだろう」
私の疑問を自信満々の答えで跳ね返す速水。
したり顔で廊下をモデルのように歩き出すが、
「職員室反対だけど」
最後まで道を間違えてた。
速水について今日わかったこと、方向感覚がない。つまりは方向音痴。
速水は結構馬鹿なんじゃないかと…思い始めた今日この頃。
続く。