少し後ろからついて行く形になったが、その後も速水は道を間違えまくっていた。


「そっち行くと海に出るけど」


「そ…それくらい知っているとも」


「そっちは自然公園」


「…なに、少し自然をだな…」


「病院に何か用でもあんの?」


「…気分が悪くなったような気がしたのだ」


「商店街は通学路に入ってないけど」


「よ、寄り道をしようと思っただけだ!」


「電車乗らないし」


「………」


遂に何も言い返すことなく、黙り込んだ速水は暫く進むとまた立ち止まる。


「いい加減、迷ったって言えば?」


いちいち忠告するのも疲れたから、つい正直に思っていたことを伝えてしまった。
そしたら、俯いていた速水が本当に恨めしそうな顔で私を睨んだ。


「…迷っているように見えるのなら…さっさと案内をしろ!馬鹿っ!」


何故急に開き直るのだ。
それと人にものを頼む態度が悪すぎる。
しかしここで下手に構っていると遅刻するかも知れない。


「…こっち」


少々私の心境が態度に反映されているが、構わない。
立ち尽くす速水の横をすり抜け、普段通っている道を行く。
私の後を速水が黙ったままついて来る。その表情は何とも言い難い微妙なものだったけど。