「と、突然声をかけるな。驚くだろう」


いやいや、普通に声かけただけじゃないの。
何をソワソワしてるのか、落ち着かない様子で速水は目をキョロキョロさせる。


「…で、結局何してんの?」


「貴様には関係ないことだ」


そう言ってまた少し焦ったように十字路を見渡してる速水。







「もしかしてさぁ…道わかんないの?あんた」


「なっ、何を言う!ここ、この俺が道に迷うわけがっ…な、ないだろうっ?」


誰が聞いたって図星だとわかる。
どんだけ動揺してるんだ、この人。声裏返ってるし、私に聞くな。

目を合わせようとしない速水にジトッとした視線を送ると、明らかに引きつった笑みを張り付けたまま十字路を左に曲がった。


「…そっちに学校ないけど」


「…別に曲がろうとしたわけではない」


「真っ直ぐ行っても学校に着かないけど」


「ふん…言われなくともわかってる」


嘘つけよ。
大きく回り道をして彼は正しい道を少し早足で進む。
高校が同じ訳だから、私も黙ってその後に続く。