僕はころころと彼女の体内を進む。

真っ暗でどこにいるのか分からない。

数秒後、僕はぽちゃん、という水の感覚とともに着地した。


彼女の中は、温かかった。

心地のいい温度だった。

やがて、僕は溶けてなくなるのだろう。

もうこの右目が光を映すことはないのだろう。

これから先の彼女の人生を見つめることは、もうなくなるのだろう。

それは寂しいことだけど、ありがたくもあった。

手も足も出ない僕には、彼女が誰かと幸せになっていく様を、ただ眺めることしかできない。

そんな映像は、見たくなかった。