命令を受けた三番隊隊士達は、従順な返事をして、すぐに伍長を先頭とした隊列に組み直した。


そして浅葱の隊服を翻し、京の街中へと戻っていく。


「……」
隊士たちを見ていた光に向き直ると、斎藤はおもむろに左手を上げ、光の顎の下辺りまで伸ばした。


「一さん?……何を」


困惑を露わにする光に、斎藤は無表情で言葉の一つでさえ、何も言わなかった。


ひんやりとした指先が覆面の布の下から入り込み、光の首筋にそっと触れる。光は身体を震わせ、漏れそうになる声を必死に耐えた。


何かを探るように、斎藤は光の首や首筋に指を滑らせる。


その間も、彼の表情は無表情であったが、瞳だけが冷たい色を宿しており、光は射抜かれたような気分に陥った。


(……まさか――……!)


彼の取った奇妙な行動の意図を正確に読み取った光は、彼の手から跳ぶように離れようとした。


だが、それは叶わぬ事であった。