だが、俺の目の前にいる“井岡”光には“下川”光にあった、屈託のない太陽の笑みは何処にも見当たらなかった。


それらが無くなったかわりにあるのは、唇に滲ませた、愛想笑いや薄笑いのみだ。


口調は敬語で、口元は笑みを形どっていたが、目は笑っていない。そこには、常に何かを警戒するような鋭さがあった。



――何がお前をそんなに変えたん?



昔の光を知っている俺にとっては、今の光はまるで別人だった。触れれば冷感を感じる、美しい芸術的な石像のようだ。


何もない。感情も心も。そう感じる。



何はともあれ、会えて嬉しいことには変わりなかったが、俺の口から発せられたのは、今までで滅多に出したことのないような怒鳴り声だ。


今すぐ“ふざけるな”と叫びたかった。“なぜ袴や刀を身につけている”と、怒りに任せて問い詰めたかった。


しかし、感情を露わにしたのは、それだけが理由ではない。


壬生浪士組は危険な場所。だから、素直に『会いたかった』『会えて嬉しい』と言えないことが、凄まじく悔しくてたまらなかったのだ。