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人気のない中庭の隅まで来ると、山崎は光の両肩を強く掴み、抵抗出来ないよう、壁に押し付けた。


光の背中は、強くはないが少し乱雑な動作で壁に当たり、僅かだが、嫌な衝撃が背中に走るのが分かる。


光には、それが山崎自身の苛立ちを顕著に表しているかのように思えてならなかった。


「…………ッ」

「何で来たん、光? ここはお前みたいなヤツが来る所やないって分かっとるやろが……」


強い力が入っている山崎の手を退けようと抵抗を試みるが、筋力の男女差なのか、少し動かすことさえもが叶わない。


それでも諦めずに、無言で抵抗を続ける光を見て、山崎は唇の端を加虐的に歪た。やけに静かで平坦な声音を発する。


「なあ……光。久々に会うたと思たら……何やねん、そないな格好して……」


流れるように長い光の髪を、右指に絡ませ、冷たく妖艶な表情を浮かべた山崎。


数年前までは、同じ師の下にいる門下生だったというのに、今回の再会はまるで因縁の相手と出会ってしまったようだ。


「……離せ……御太郎……!」


「御太郎は偽名。俺は山崎烝言うたやろ」