「近藤さん。今度、近い内に山崎を呼んで、色々と話し合おうぜ。井岡のことをな……」


「井岡君は――本人は呼ばないのか?」


そう言い直した近藤は、表情こそ変わらないが、声音には少しの非難が混ぜられていた。陰で他人を言うことが許せないに違いない。


――だが、アンタは優しすぎる。眩しい程に真っ直ぐで、武士の気骨を持っている男だが……正直に言うと愚直なんだ。


「分かってくれ。この組のためだ」


「……そうか、組の為なら致し方ない」
やりきれないため息を吐いた近藤は、何かから逃れるように、かたく目を瞑った。


今の日本国では、佐幕や倒幕やら騒いでいるが、土方にはあまり関係のないことなのである。


便利なら、外国の物でも使用する。それが武器や衣服、学問でさえだ。使えるものは使う。それが土方の持論であった。


近藤は土方に剣術を指南し、武士道とは何かを語ってくれた。ならば次は、自らが近藤に恩義を尽くす番である。


――アンタが国を守りたいなら、アンタごと俺がこの国を守ってやる!――


そう近藤に熱く叫んだのは何時だったか。