「ったく……あいつはいつまでたっても成長しねえな。未だに乳臭え餓鬼じゃねえかよ」


悔し紛れに土方が毒づくと、それを聞いた近藤は朗らかに笑って言った。


「はははっ。変わるだけが全ての人にとって良いことじゃない。総司は変わらない方がいいだろうよ。人を斬っても普段は純粋でいてほしい」


「まあなァ……」
今や二人となった部屋で、土方は曖昧な返事を返した。


“近藤さん……あいつは、アンタの為なら人を斬ることを躊躇わない奴だ”


もし、土方がそう言ったとしたら、近藤は胸を押さえて悲しむのだろうか。それとも、局長を辞めたいと思うのだろうか。


――俺はアンタを幕臣にしてやるんだ。それは総司だって知っている。いや、知っているだけでなく、恐らく同じ気持ちだろう。


「……そう言やあ、乱走刀華なんて流派、俺は知らねえな。近藤さんは知ってるか?」


「ん? いや……残念だが知らない。だが“無敵”なんて言うからには、知られていても可笑しく無いはずじゃないか?」


考えている近藤をよそに、土方は光が座っていた辺りをジッと見つめ、無性に煙管を吸いたくなっていた。


なぜなら長年の癖で、物事を深く考えるときには、煙管がないと落ち着かないからだ。