しかしながら、近藤は自分の言葉に毒気が含まれていることに気付いていない。むしろ、沖田を叱っているようである。


――だが。


「……ック……」


一見、俯いて反省の姿勢を取っている総司だが、よく見ると両肩が小刻みに揺れている。


拳をきつく握り、口の隙間から漏れる笑いを必死に堪えようとしていた。


だが、近藤からすれば『僕はなんて事を言ってしまったんだ……』と、自責の念に駆られているようにしか見えないのだ。


これを見て、我慢ならないのが土方だ。


「チッ……てめえには一々腹が立つな……。おいこら、山崎と井岡に相部屋だと伝えてこい!」


「ッ……はい」


沖田は、咄嗟に作った真面目な顔が崩れないうちに、挨拶もそこそこにその部屋から早足で立ち去った。


その足音が遠ざかると、土方は疲れたように重苦しいため息を吐く。元服した大人なのに、沖田の無邪気さと子供特有の残酷さはいつまで経っても消える事がない。