「駄目だ。寝首を掻かれたらどうする?」


「ええ? 井岡さんはそんな人じゃないですよー! あんなに剣術が強いし、また手合わせしたいなあー……」


恍惚とした表情をしたかと思うと、「次は絶対に勝ちます」と、不敵な笑みを浮かべて言う総司に、土方は呆れるしかなかった。


「……はっきりとした身元が分かるまで、あまり馴れ合うなよ、総司」


咎めるような口振りで言う土方だが、逆に沖田は「土方さん……」と、哀れみと同情を含んだ視線で見下げてきたのだった。


「……そんな事言うから、友人と恋仲の人が出来ないんですね……」


「うるせえ! 出来ないんじゃなくて、作らないんだよ! だいたい、てめえだっていねえだろうが」


苛立った土方が、思わず口調を荒げて言い返すと、沖田は一瞬だけきょとんとし、次第に表情から明るい色を消していった。


「僕はいいんですよ。
女子は弱いから嫌いですし」


冷たい表情を浮かべたままで、沖田はヘラッと笑って見せる。土方は、稽古や巡察でしか見せない冷たい沖田の顔や瞳を見る。


「いりませんよ、守られるだけの女なんて」