部屋にいる誰かが山崎と井岡を呼び止める前に、山崎の手によって襖が少々乱暴に閉められた。
部屋には静かな沈黙が流れる。
静さに居心地の悪さを感じ、他の二人を見ると、近藤は呆然としていて、沖田は似合わないしかめっ面をしていたのだ。
無性に煙管を吸いたくなった土方だが、生憎、ここは近藤の部屋だ。自室に置いてきている。
──山崎の知り合いらしいな。
先程の山崎と井岡のやりとりを思い出し、土方は静かに考えに浸り始めた。
山崎は信頼に足る、いわば土方の腹心であった。だが井岡はまだ足りない。否、さらに不信感は増すばかりだである。
“井岡は壬生浪士組にいるべきではない”
“間者ではない”
そこまで考えると、一つ、侍ではないのかもしれないという考えに至った。そうなれば、山崎の言った発言にも頷ける。
しかしながら、ここには元々侍ではない奴はごまんといるのだ。理由には当てはまらない。その上、井岡はあの総司に勝利した者だ。
侍でない方がおかしい。