思いがけない提案に近藤は目を瞬いた。


強い者にしか興味を示さない沖田。しかし、こうなることは分かっていたのか、近藤は笑いながら許可を出そうとする。


「待ってくれ、近藤さん」
そこで声をあげたのが土方である。


「考えてみろ、総司。さっきの入隊試験でお前はこいつに負けただろ。勝者が敗者の下につくなんざ、可笑しいだろうが」


「……。でも――」
一理ある、と感じたのだろうか。沖田は少し沈黙したが、すぐに顔を上げて反論しようとする。



「でもじゃねえ。さっきの試験を見ていた奴は沢山いた。なのに一番隊に配属したら、平隊士から不満が出る……ちゃんと実力で役職を決めているのか、ってな」


「…………」


さらに言い募ろうとする沖田に、土方は頭をガシガシと掻いて「はぁ……」というため息を漏らした。


「だが、新入りをいきなり組長にするわけにはいかねえ……井岡を監察方兼副長助勤にする。それしかねえだろ。いいよな、近藤さん?」


有無を言わせない強い声音。局長の顔を立ててはいるが、自分の意見が正しいと信じているようだ。