先程までの真面目な顔やおどけた顔とは打って変わり、土方同様、鋭い視線を隠そうともしない沖田。


街中で初めて会った時の眼だ。


「貴方の腕力は強くはありません。だけど速さが異常だ。僕が捉えられないのは、山崎君くらいだと思っていましたから……」


山崎という人物は知らないが、沖田が捉えられない動きをするらしい。そんな動きをするのは――――、
(……忍だな、恐らくは。そして監察方)


「何者です、貴方」


冷淡な声音で質問をする沖田。彼の手は刀の柄に掛かっていないが、僅かに右手が曲がっている。


「『答えようによっては斬る』と言っているのですよね?」


「ええ勿論。長州や開国派の間者なら、即座に斬り捨てますよ。貴方程も強い方が、壬生狼に入りたいなど――――」


彼の眼は、有り得ないと語っていた。


「……私は間者ではありません。そこまで疑うなら、入隊させてもらわなくて結構」


きっぱりとそう言うと、歩を進め始める沖田は右手を元に戻し、さも楽しそうにくすくすという笑みを零した。