騒ぎに興味を持った光がその場所に歩み寄ると、腕を掴まれている少女と、浪士の風体をした男3人がいた。


「嫌、離してください……!
誰か……、っ、誰か助けて……!」


「うるせえぞ、女。騒ぐんじゃねえ。
こっちに来いと言ってるだろ!」


どうやら、経緯は分からないが、男3人が嫌がる少女を無理矢理、連れて行こうとしているらしい。


その少女は両腕を振り、必死で抵抗して群集に助けを求めるが、生憎、刀を持った浪士3人に立ち向かう者はいなかった。


我が身可愛さにみて見ぬ振り、という奴だ。この治安が乱れた時代では、自分の命が一番なのだろうが、中には同じく刀を持った浪士もいたというのに……。


「全く情けない」


光は上げていた口角を下げると、無表情のまま、呆れた口調で静かに言い放った。


少女を無理矢理連れて行こうとする、外道な浪士に言ったのか。はたまた、助けない野次馬共に言ったのか……。


恐らくどちらもだろう。