「ほら、あいつらですよ」
葬儀から五日後のことだ。監察方の内、監察頭である山崎が選んだ、選りすぐりの四名で長州の間者の捜索に当たっていた。
山崎烝。
井岡光。
島田魁。
吉村貫一郎。
島田という男は、大層な巨漢であり、山崎によれば『怪力だが沖田をも凌ぐ甘党』らしい(こんな大男が甘味を頬張っているところは想像できないのだが)。
山崎に並ぼうかというほどの諜報の能力を備えている島田は、大柄ゆえに愚鈍に見えがちだが、その実、監察に相応しい身のこなしを見せたりもする。
そして、吉村は色白で背が高く、北辰一刀流という、山南や藤堂と同じ流派の剣術に秀でているらしい。
よく言えば顔に粗がなく、悪く言えば顔にこれと言った特徴の無い吉村。彼は、山崎や光に準じて、変装に向いている。
この五日間で、四人は思い思いの捜索を展開し、長州の間者を突き止めるに至った。
四人は、屯所の庭にある池のほとりに立っていた。少し離れた場所を歩いている二人組を認めると、島田が小さく囁いた。
「あいつらが、御倉伊勢武、荒木田左馬之助……長州の間者のようです」
それを聞いた山崎と光は、さり気なく確認すると、談笑をしているように見せかけて、会話を続けた。
光は密かに“ああ、確かにそんな名前が長州の奴らだったな”と一人納得をしたが、気取られないように笑みを浮かべることは怠らない。
「島田、それは確かか」
「はい。前々からきな臭え奴だとは思っていたんですがね。吉村が跡を着けたら案の定…………」
苦々しく言う島田は、一旦そこで言葉を切ったが、後に続く言葉は誰にでも容易く想像出来る。
「長州と繋がりがあった、と。
……分かった。井岡と俺は副長に報告、島田と吉村は見張りを続けろ」
「はい」