翌日、芹沢らが住まいとしていた八木邸の娘が、ある一室で変わり果てた彼らの遺体を発見した。


部屋には夥しいまでの血が赤黒く乾いており、血独特のむせかえる臭いが立ち込めていたと言う。


第一発見者となった彼女は、年頃の娘にも関わらず、気丈にも叫び声一つ上げずに部屋の様子を確認し、近藤らが住まう前川邸に走った。


僅かに声が震えていたようだが、しっかりと状況を近藤に報告し、今後の葬儀の対応を頼んでいたそうだ。


そのことは組長を通じて全隊士に伝わり、悲しむ暇(いとま)もないまま、すぐに彼らの葬儀の支度が進められることとなった。


八木邸には、目にも眩しい白の袴を着た隊士と八木邸の住人が整列している。


組の頂点に君臨することになった近藤は、震える声で涙ながらに弔辞を読んだ。


――近藤局長は決行を知っていたはずだが、たとえそうでも涙は出るものなのか。


白一色の葬儀に、白々しさや虚しさが増すように感じるのは、ただ歴史を知る光の主観なのかもしれない。


葬式の正装である白い衣装を着た光は、同じく白を着た山崎の隣に立ち、そんな辛辣なことを心の中で呟く。


ぼんやりとしている光には、棺桶をじっと眺めることしか出来ない。ただ、何も出来ない自分の無力さを痛感するだけだ。


――だが、迷わない。後戻りはしない。


「……監察方にはもう伝えてある。
今日から……早速動くぞ」


正面を向いたまま、押し殺した声で言う監察頭に、光も正面を向いたまま、悲しげな表情を変えず、「承知」と呟いてみせた。