女と言っても一口では無かった。井岡のような女の規格を超えた奴もいた。


そして、梅と一緒に過ごすことで、心が温かく満たされる。


これまでに体の繋がりしか無かった遊女は、心の繋がりのある梅には、何一つ及ばない。


借金の取り立てに来たいけ好かない女は、今や何より大切な存在へと変わった。


梅を抱き締めた側から、角屋で近藤たちのおかしな様子を思い出してしまい、芹沢はひっそりと表情を哀しげなものにした。


「お梅。もし儂が――……」


喉まで出掛かった次の言葉を止めた。


もし儂が死んだら――お前はどうする?


今から聞こうとしていたことに、芹沢は失笑せざるを得なかった。それこそ聞いてどうするのだ。芹沢は梅にどのような答えを望んでいるというのか。


――莫迦者か、儂は。


自嘲していると、梅が子供をあやすように背中をさすってきた。
もしかしたら、彼女にとって芹沢は大きな子供と変わらないのではないか、と思う。


「私は生涯、貴方と共にあります」

「……そうか」


身が震えた。次第に息が苦しくなって、梅の華奢な背中に腕を回して引き寄せる。


川が氾濫するように、膨大な何かが押し寄せてくるのが分かった。自分で張り巡らせた壁が、もう少しで決壊しそうになる。


(共に、生きたい……)


悪事を尽くしてきた自分が語るには、あまりにも贅沢――否、傲慢な願いだ。


他人を不幸にして金を集めていた芹沢の、小さな小さな願い。
――叶えられない、ただの願望だ。