「誇らしいよ。兄弟子があの天才監察」


「それが未来の俺なん?」


光の表情が固まった。その瞬間、山崎は言ってはいけないことを言ってしまった、と激しく後悔することになる。


未来のことはもう何も聞かない。知りたいなら自分の手で探る。そう決めたはずなのに、また聞いて彼女を苦しめてしまった。


痛む頭を自らの戒めにする。
――これは、甘んじて受ける罰だ。


「……私は、確かに未来から来た。だけどその理由なんて知らないし、これは長い夢なのかもしれない。


私が知る歴史は、私が居るのが本当のものなのか。それとも本当の歴史に私が飛び込んでしまったのか……。


はっきり分からないよ。


不安で堪らなかった。お父さんお母さんに会いたい、友達に会いたい、死にたくないってずっと思ってた。


気まぐれかもしれないけど、あの人は私を救ってくれた。私の全てを賭けても守りたい人になったの。


だから……、


先生を失ってから、私は一人じゃ生きられなくなった。死んでる先生にさえ頼ってしまった……」


毅然とした口調が山崎の胸を衝く。


「……烝に言われて気付いたよ。何て馬鹿なことをしてるんだ、って。過去を振り向く暇があるなら、今を精一杯生きなきゃってね。


これからは組と民を護るよ。あの人に誓ったんだ。復讐なんて心の弱いことはしない。先生もきっと、そんなの望んでないと思う」


「うん」