九月十八日。


壬生浪士組の面々は、日が暮れてから角屋を貸し切り、芸妓や舞妓、酒によって、日頃の稽古や巡察による疲れや苦労を癒していた。


名目上は、新見の死を悼んでのことだったのだが、男というもの酒を呑み女がいれば、自然と気が大きくなるというものだ。


最早、悼むどころか宴会だ。


「酒だ酒ー! 酒持ってこい!」


一人の隊士が叫ぶ。それに便乗した隊士も叫び、寄ってきた女に顔を崩す。


やはり男はどこまで行っても男だということだ。


光は手の空いていた芸妓に酌をしてもらいながら、酒を口に運んでいた。喉が焼けるように強い酒だったが、光はその感覚を楽しんでいる。


「光! 何一人で楽しんでるんだよ!」


「平助。……随分、酔ってるな……」


酒臭さに眉間にしわが寄る。光の首に手を回して絡んできた藤堂は、あまりにも酒臭さ過ぎた。


「んー? はは、酔ってない酔ってない! 少しふらふらするだけ。大丈夫大丈夫」


「それが酔ってるんだよ……」


首に回された手を外すと、藤堂は言った側から力が抜けたように床へ倒れ込んでしまった。


頭を打ちそうだったため、光は自分の手のひらを床と頭の間に差し込み、衝撃材代わりに使う。


なにやら「うー」と呻く藤堂は、そのまま寝入ったため、そっと頭を床に寝かせた。