恥ずかしさと頬に感じる熱を振り払うように「お梅さんの方が余程、可愛らしい女子です!」と言う光に、梅は「か、可愛らしい女子……」と言って顔を上気させ、山崎は非常に複雑そうな表情をしていた。


しばらく両手で頬を押さえて背中を向けた梅は、「光ちゃんは……女の子や……うち、騙されたらあかん……!」と、意味の分からないことをぶつぶつ呟く。


首を傾げる光とは対照的に、山崎は無言で呆れたような視線を梅に注いでいた。そして光に歩み寄ると、少し屈んで光に言い聞かす。


「……あまりその顔で色目を使うな」

「色目……」


未知の言葉のように、それを口の中で呟く光。梅が背を向けている理由、山崎が渋い顔で忠告している理由を考え、『なる程、照れていたのか』と結論を導き出した。


しかし、ふいに光の表情が陰る。


――お梅さんは芹沢さんを想っている。


彼女は生涯共に在りたいと思うのだろうか。何があっても添い遂げることを望むのだろうか……?


いや……、と光は首を横に振った。


――お梅さんは死ぬんだ。私のような異分子が関わらない限り、定められたレールを辿るように、それは決して変わらない歴史じゃないか……。


「……お梅さん、羽織をありがとうございました。芹沢さんにもそうお伝え下さい。仕事があるので……失礼致します」