昼が少し過ぎた頃、中庭の方の縁側に座っていた光は、いつかのように山南とゆっくりとした時間を過ごしていた。


この暑い時期に、熱い茶は合わないため何も口にしてはいない。ただ何もせずに座っているだけで、汗が滲み出てくるようだ。


「……わたしは、臆病者です」


「山南さん……?」


虚空を見つめて弱々しくそう言う山南に、俯けていた顔を上げた光は、何とも言いようのない不安感を抱く。


この壬生浪士組内で、光の精神的な支えになっている山南。表情を作らずとも、光は心の底から山南が心配だった。


「わたしは……志を同じくした者同士、争うべきでは無いと思うんです……。たとえ法度を侵したとしても」


「……“元副長”の事ですか」


生前の新見を好きになれなかった光は、思わず皮肉を含んだ声音になってしまう。


「故人を悪く言うべきではないと思いますが……。あの人が行った事は、壬生浪士組の評判を落とすものでした」


だから残念ですが、仕方無いことです、と光が淡々と言い放つと、眉を下げた山南は「……そう、ですね」と、悲しげに微笑んだ。


――山南さんにそんな顔をさせる私は、なんて非道な人間なんだろう。言い方ってやつがあるはずなのに。