芹沢を始めとして、新見たちもやはり武士の風格を持ち合わせていて、百姓上がりの近藤派は、思わず迫力に呑まれる。


肩で風を切り、南門まで進み行く様は、近藤や土方が憧れた武士そのものだったのだ。


「……これが生まれの違いってやつか」


「ふん……芹沢局長の日頃の悪行を知らなければの話だがな……」


純粋に近藤は憧れを露わにし、土方は鼻で笑うと、芹沢の背中に悪態をついた。


一行が南門に至ると、大砲が数台置かれており、既に守りについている藩兵が何十人かがいるのが見える。


その前には長州とおぼしき兵がいる。両者は対峙こそしているが、どちらにも動きがない。


指示されたように配置に付くと、睨み合った状態のまま、何の変化もなく数刻が経過した。


――光は知っている。


この八月十八日の政変では、このまま何事もなく時間が経つ。やがて長州兵らは、追い出された尊皇攘夷派の公卿を七人連れて、本国へ逃げ帰るということを。


だから臨戦態勢を取らず、光は近くにいた永倉に「井岡君」と、注意される位、ただぼんやりと立っていたのだ。