「壬生浪士組だと? その様な事は知らされてはおらぬ。貴様らなど知らぬわ!」


帰れ、という風に槍の穂先を向けられる。しかし、命令を受けた以上、御所の守備を遂行しなければならないのだ。


――どうすればよいのか……。
隊士たち皆がそう考えていると、門の向こう側から、一人の壮年である男が走ってきた。


服が上等なものであることから、会津の中でも身分が高い人だということが容易く想像出来た。


「槍を下げよ……!」


勢い良く走ってきたせいか、彼の息は呼吸すらままならない程に乱れきっていたのだ。
「……そちらは我らが要請した壬生浪士組の方々だ……!」


芹沢と近藤の前までくると、彼は息が乱れているまま、頭を下げた。


「この者たちは……京に上がって……日が間もないのだ……! 今日の事も突然の事で、伝達が遅れてしまった! 申し訳ない……!」


「……そうでしたか。気にはしていない故、頭をお上げください。南門の守護、我ら壬生浪士組が勤めさせて頂きます」


誰もが聞き入ってしまうほど、 芹沢の態度や物言いは武士らしく、近藤や土方が驚いたように見つめていた。