「……そうだな。すまない」


黙り込んだ光が不機嫌になったと思ったのだろうか。斎藤は少し暗くなった声音で謝り、光に太刀を返した。


受け取った光は、腰に太刀を差すと少し沈黙して、「いいえ、気にしていませんよ。さあ、並びましょう。そろそろ出発するようです」と笑う。


一さんに当たるな。一さんは悪気があって言ったんじゃないんだ。それに、強(あなが)ち嘘じゃない……。


胸の内で呟きながら、光と斎藤は、隊士が列を為す場所へ並びに行く。


先頭に「誠」という一文字が刻まれた隊旗を掲げた壬生浪士組。会津侯から下された命を果たすため、守護を任された御所へと向かった。







「止まれ! 何者だ、名を名乗れ!」


一行が門の前まで来ると、藩兵たちが門を抜けようとした近藤と芹沢に槍を向けて声を荒げる。


「我らは会津藩御預り、壬生浪士組である! 御所南門の守護の命を松平容保侯より受け、ここに参上つかまつった!」


物怖じせず、堂々として言うのは芹沢だった。その風格は、浪士などではなく、まさしく武士の気高さがある。


しかし、藩兵は槍を退けなかった。