「一さん」
少し驚き、光は声音が高くなる。


「……お前の刀はいい刀だな」


身長の高い斎藤は背中を曲げて、光の刀をのぞき込んでいた。彼は、真剣な顔つきで柄と鞘、鍔を観察している。


「無銘の刀ですよ」


苦笑した光は、太刀を腰から外すと、見えやすいように斎藤へ手渡す。受け取った斎藤は、少し刀身を抜くと、その白刃に見入っていた。


――刀が好きなのか。斎藤の意外な一面が見えたような気がした。


「いや、綺麗に手入れされている。それに、中々使い込まれているようだな」


「……あまり嬉しくありませんね」


使い込まれているというのは、その分、刀が人の血を知っているということだ。つまり、その分、人を殺めているということになる。


刀は血を吸えば吸うほど、その輝きを妖しく増すように思えるのだ。嬉しい筈がない。


美しく、妖しい。そんなものには毒があることは、考えるまでもなく、分かり切っていることだ。


その様に魅入られて迂闊に触れれば、たちまち指が飛ぶことになるというのに――。