思考に浸っていると、やがて、明かりが点いている自分の部屋の前に来た。躊躇いも何も無く、襖に手を掛けて、一気に開ける。


予想通り、そこには山崎がいた。紺の夜着に着替え、書物を片手に持ち、壁に背を預けている彼が。


声を掛けようとして息を吸うが、あんな叱咤を受けた手前、何と言えばいいのか分からず、そのまま息を吐き出した。


取り敢えず戸を占めて、山崎の前に座る。だが、山崎は身じろぎ一つせずに書物に見入っている。


いつもなら無視をされることは絶対に無い。距離を感じて悲しくなった光だが、自分に喝を入れて話しかける。


「烝」


「……なんや」と、無表情で返された。


(…………お、怒ってるよなコレは……)と、光は少したじろぐ。普段甘い人が怒るのは怖いものだ。


光は片膝を付き、頭を下げた。いつも光と烝は、昔馴染みだからといって、私情を混ぜたりはしない。


締めるところは締めねば、下の監察や隊士の士気が下がり、後を着いてくることはないからだ。

   ...
「――監察頭。先程は、私情で勝手な単独行動を取ってすみませんでした」


「自分の行動が、どれだけの危険を孕んでいたか、ちゃんと分かっているのか?」