そうだ。光は知っている。


――この人たちの哀れで皮肉な末路を。


この人たちは死ぬのだ。自らの悪行が仇になり、味方であるはずの壬生浪士組によって暗殺されてしまう。


しかし梅は無実だ。悪いことは何もしていない、ただの妾にすぎない。だが、彼女もろとも芹沢派は暗殺される。


少し悲しみを含んだ目で2人を見つめると、梅が不思議そうに「どうかしたん、光ちゃん」と、とても可愛らしく小首を傾けた。


「いえ……、」言葉に詰まった光は、にっこりと曖昧に微笑んだ。「……お梅さんがあまりにもお綺麗なので見とれてしまいました」


「ふふふ、口が上手やなぁ」


端から見れば、まさしく美男美女の恋仲だ。あるいは、光が梅を口説いているようにも見える。


しかし女同士のため、当人たちにはそんなつもりは全くなかったのだが、芹沢は『お梅が落ちるかもしれん』と、杞憂な心配をしていた。


そのため、二人とも光の表情には気付かない。


首を振って邪念を払う芹沢は、光の目を真っ直ぐに見据えた。悪人の眼差しとは思えないほど真っ直ぐに。