「……井岡光……、貴様にはいくつか聞きたいことがある。全て嘘偽りなく答えよ。良いな?」


真剣な表情をする芹沢に、光は覚悟を決めた。最早、じたばた足掻いてもどうにかなるものではない、と感じたからだ。


「貴様は女だろう。何故こんな男所帯で隊士などをする必要がある?」


純粋な疑問を投げかける芹沢。しかし光は、何故芹沢派が光の性別を見抜けたのかが理解できない。


かまをかけている訳ではなく、知っている前提で話を進めている様なのも気になるところだ。


「……国を救いたいという志に、男も女も関係ありません。力のある者が刀を握る……それは至極当然でしょう」


「ふん……建前はよい。貴様の眼は国の事など考えておらぬわ。正直に申せと言ったろうに……」


呆れたように嘆息をつく芹沢は、どうやら光の事情を思ったより深いところまで知っているらしい。


――何を、どこまで知っている……?
漠然とした不安に襲われた。


(烝、烝……)


助けを求めるように、胸の内でその名を呟く。しかし、彼の冷たい表情を思い出し、自分を戒めるように拳を握った。