「私は役に立ちませんか? だからせめてもの情けにと、剣撃師範紛いのことをさせるのですか?

何故、何故……。貴方も、私に刀は似合わない、出ていけと仰るのですか!?」









「口が過ぎるぞ、井岡光」









背後から朗々とした声が届いた。何の感情も宿していないそれは、その場にいる誰もが姿を見ずとも、一瞬で誰かを理解する。


――芹沢鴨。


数日前、過激派攘夷浪士に金を貸している“大和屋”に金策をしようとして断られ、大砲で打ち壊した狂気の局長。


「儂が土方に命令した。『任務をさせるな』と。何故なのかは貴様が一番知っておろう、井岡光」


名を呼ばれた瞬間、光は無表情になっていた顔に、いつもの不敵な笑みを浮かべてみせた。


そして瞳には冷たい色が宿る。


「こんばんは、芹沢局長。しかし、そう仰られましても皆目見当もつきませんが」


「確かに貴様は敵でもなく間者でもない。しかし、自分のことだというのに忘れてはいまいか? 貴様が、――――」