仇を討つために光が生きていることは、師匠の本意ではないだろう。あの人は、そんな為に光に力を付けさせたんじゃない。


師匠の仇は師匠以上の手練れ。そして、佐幕を唱えた師匠を殺したのは、おそらく倒幕派。


たったそれだけの手掛かりで、光は必死に仇を追い求めている。どれだけ沢山の浪士を手に掛けたのだろう。


侍になってからの空白の二年に、ここまで必死になる何かがあったか。あるいは、少しでも情報を掴んだのか――――。


「山崎さん、彼は――光さんは大丈夫なんですか。随分思いつめたような顔をしていたようですが……」


「……あいつの強さはほんまもんです。きっと傷一つせずに帰ってきますわ。それに――――……俺はあいつを止めれへんかった」


「諦めが悪いとか言っていた事ですか?」


食い下がって聞いてくる沖田に、少し無神経すぎやしないか、という僅かな苛立ちを感じた。


「……さあ、早く屯所に帰りますよ」


これ以上、人の事情に土足で踏み入れるな。容赦なく線引きをすると、すまなそうに苦笑いをしている沖田を急かした。


――半ば、大人気ない八つ当たりだ。