「私が様子を見てくる」


名乗りをあげたのは光だった。先程鍛冶屋で購入した短刀を懐の上から触ると、鋭い眼と口調のまま、裏路地に入っていこうとする。


「武器を持っているのは私だけだ。なら私が見に行くのは当然のこと」


「ですが光さん!」「阿呆、光!」


「……分かっているよな。私は良くも悪くも諦めが悪い。私を思うなら、行かせてくれるだろう?……烝」


それを聞いた山崎は、手足を動かすことが出来なかった。止めなければいけないのに、声を発することは出来ない。


きっと、光も分かっていてそう言ったのだろう。


――復讐を。夜叉のごとき光の眼は、それを渇望していた。


「大丈夫。ただの様子見だ」


綺麗な顔に凄惨な微笑を浮かべた光は「……非番なのにすまない。2人はそのまま屯所に戻って報告を」と、言うと今度こそ背中を向けて路地に入ってしまった。


(……顔も分からん奴にどないして復讐すんねん……。ほんまにあいつ、そないなことして師匠が喜ぶ思とるんか?!)


山崎はギリッと歯を噛みしめる。