沖田があらかた甘味を食べ終わったため、山崎たちは一緒に勘定を払って田屋から出た。


「…………!?」


店先に立つと、山崎は僅かな音を捉える。一般の人や侍になら、絶対に分からないだろうという音量だ。


――これは大勢の人間が走っている音。つま先で足音を吸収している走り方だ。数は……5人くらいか。


こんなにもお粗末な走り方をしている者たちが、ましてやこんな明るい内からいる者たちが忍のわけがない。


侍だ。だが、こそこそと隠れるような真似をする侍は、ろくな奴らでないことは確かである。


長人。その言葉が思考を掠めた。


「烝」「分かっとる」


鋭い声を発した光に一つ頷き、状況が掴めずに首を傾げている沖田さんに声を掛けた。


「沖田さん、怪しい侍の集団が近くの裏路地にいます」


途端に表情を一番隊組長・沖田総司のものに変えた沖田さんは、山崎と光同様に耳をすませた。


――近くまで来ている。修行時代に嫌でも鍛えられた聴力は、侍たちの一団の足取りを補足して、決して逃さない。