大人びた口調でそう言った光は、山崎を見上げて少し笑った。「……行こう、烝」


「ああ」


山崎たちは店主に背中を向けると、横に並んで立ち去る。


その間、店主から向けられた視線は、何時までも俺たちから外れることはなかった。


――――違和感を感じる。


根本的な何かを見透かされているような、または、体の内側を覗き見されているような、強い不快感が山崎を襲った。


侍を見てきた刀鍛冶だからだろうか。山崎たちの持っている力の本質が如何様(いかよう)なものか、見極められている気がする。


忍は力を誇示することをひどく嫌う。人畜無害に見せかけた、ただの民にさえ見えればよい。


時には侍、商人、農民、女。幾多の顔をあわせ持ち、本当の自分は、その基本形に過ぎないと信じた。


――光は知らんでええ。いや、光だけやのうて誰も彼も、や。ほんまもんの俺がただの薄汚い男なんて。