「烝、鍛冶屋に行ってもいい?」


声を掛けられてハッと我に返ると、光が山崎の着流しの袖をつんつんと引っ張っていた。


「あ? ああ……ええよ」


しばらく光の後を追うと、町外れの方に小さな小屋が数棟立っているところに出た。


鉄を叩くような音が複数するここは、鍛冶屋が集まって住むところだ。


監察である山崎は、もちろんここを熟知していて、しばしご用になることもある。


店に入ると、店主の男が「いらっしゃい!」と、声を掛けてきた。対して、光は懐から短刀を取り出して、店主に手渡す。


「刃こぼれが酷くて使えない刀だ。
できるなら打ち直して欲しくてね……」


「へえ。抜いてもいいですかぃ?」


「勿論構わない」


金属の擦れる音を響かせて、男がその鈍色の刀身を鞘からゆっくりと引き抜いた。