山崎はそれを誤魔化すように首を左右に振ると、光の手首を掴み、店の方へと連れて行った。


「ほら、どれや」


いくら自分を男だと偽ろうと、本質は女であることに変わりはない。つまり、可愛らしい雑貨を欲しがってもおかしくはないということだ。


「………本当にいいの?」


「なんべんも聞くな」


未だに赤面した顔であたりをキョロキョロと見回し、恥ずかしそうに雑貨を見る光。やがて遠慮がちに一つの簪を指差す。


「…………これ」


光が指さしたのは、今の季節に合う色鮮やかな葉色の簪だった。女子ならば桃色やら紅の簪を欲しがるだろうが、光は違うようだ。


確かに綺麗で爽やかな色である。


光がそれを着けた様子が容易に想像できた山崎は、微かに笑うと「すんまへん!」と、店主に声を掛けた。人の良さそうな中年の女将に金を払うと、その簪を光に手渡す。


「おおきに! またおいでやす」