(……どうしたものか。まあ、本人が良いと言っているんだからいいか)


諦め半分でそう結論づけて、竹刀をなおし終えた隊士達を近くまで呼び寄せた。


集まってくる隊士の目が輝いているのは――気のせいだろう。


「ではまず、松原組長。
貴方は力が強く、攻撃力が優れています。しかし実戦形式の場合、剣道という意識を捨てねばなりません。他の人もそうです。貴方のお得意な柔術も用いてみてもいいかと」


「成程、柔術を……ありがとう」
光の助言に表情を緩ませながら、松原は深く頭を下げた。


「平助は……隙が無くて剣筋がいい。だが、どれも底がまだまだ浅い。実戦形式の稽古で経験を積んだらいい」


「そっか……わかった。ありがとう!」


一人ひとりに細やかな助言をしていく。それは組長のみならず、動きが悪い末端の隊士までもであり、的を得たものだった。


稽古場の間、光はおよそ二十人に及ぼうかという隊士たちの動きを記憶して、長所と短所を指摘していた。


助言はさほど難しい内容ではなく、努力をすれば必ず実現出来るようなもので、隊士の士気はますます上がる。


壬生浪士組内で稽古を一通り周り終えると、陰口は叩かれなくなり、その外見もあいまって、逆に「井岡先生」と尊敬するものさえ現れた。